第53章

相澤裕樹は苛立ちながら電話を切った。

会社に車で向かおうとしていた。

だが突然、携帯が鳴り出した。

お爺さんからだった。

彼は急いで気持ちを整え、電話に出た。

「お爺さん」

「浅子が昨夜怪我をしたと聞いたが?どうなんだ?」

「傷の処置はしてもらいました。特に深刻ではなく、医者によると一週間ほどで回復するそうです」

「胸を一突き刺されたと聞いたが、どうして大丈夫なんだ?心配だ、わしが直接見に行く。お前も一緒に来い!」

相澤裕樹は眉をひそめた。

お爺さんと一緒に彼女に会いに行くなら、本来の身分で行くことになる。

今その身分で彼女に会うのは、どうしても居心地が悪い…

「今す...

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